寝たきりと健康について

私たちが行なっている活動の一つに「訪問マッサージ」という仕事があります。医療の業界に関係のある方、接する機会が少ない方々には馴染みのない言葉かもしれません。る機のある方でないとあまり馴染みが無く、聞いたことがないかもしれません。

 

「訪問マッサージ」とは医師の同意のもと、ご病気や怪我など、何らかの理由で歩行が難しい方や、外出が困難な方のご自宅(施設)に伺い、マッサージやストレッチなどによって身体の状態を改善する医療保険(1回300円~600円前後)を使ったサービスです。

 

内閣府が平成28年に発表したデータによれば日本の人口の4人に1人が65歳以上の方で占められているそうです。75歳以上で計算すると10人に1人の割合になるそうです。まだ先の話ですが、2065年になると人口の2・6人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上の方になるそうです。(高齢化の現状と将来像、高齢社会白書、内閣府、平29年)

 

 

 

現在もご年配の方が老後を健やかに暮らすための有料老人ホームがあちこちに新しく建てられており、施設の方にお話を伺うと入居者の方の募集を行なうと1年もせずに定員に達し、人気のある施設の場合、入居待ちの方が100人ほどいらっしゃるところもあるそうです。

 

私も施設にご入居されてらっしゃる方に対して、体の痛みの緩和・関節の拘縮の予防の為に週に2,3回訪問してマッサージをする仕事を何年間か続けてきましたが、そこでいくつか気付いたことがあります。私が訪問させていただいてる患者様以外の入居者の方々と顔なじみにもなり、数年経つ頃にふと周りを見渡すと、以前は杖歩行で歩いていた方・ご自分の足で歩けていた方が車椅子の生活になっているケースが多かったということです。

 

 

 

もちろん年を重ねていくうちに足腰が悪くなり、車椅子で生活される方もいらっしゃいます。ですが、施設で勤めている、主に入居者の方に歩行訓練やストレッチなどを行なうことによって立つ・座る・歩くなどの人間の運動機能を高める・支える専門家である理学療法士の方のお話を伺うと、「1日何十人の方のリハビリや訓練をしないといけない場合、一人の方にかけてあげられる時間が少なく、体の状態が改善されず、状態が落ちていってしまう方もいる」「体の状態が良い方はリハビリの時間だけ体を動かすのではなく、生活の中でできることは出来るだけ自分で行なっていたり、散歩に出られたりする方が多い」とのことでした。

 

人間の体は動かしたり、散歩をしたり、買い物に出かける、洗濯物をたたむなど、使っていく事によって発達し、鍛えられていきます。逆に、ずっとベッドで寝たきりでいたり、散歩に出かけなかったり、体を動かさないでいると筋力や肺活量、運動機能が落ちていき、いままでできたことができなくなったりしていきます。これを廃用症候群(廃用性委縮)といいます。

 

 

 

仮に入院や怪我などにより体を動かさずに寝たきりの状態が続いた場合、1週間で15%ほど全体の筋力が落ち、体力低下も含めた回復には1ヵ月ほどかかると言われています。

筋力や体力が低下すると様々な運動機能低下や精神的な活動の低下が起こります。

 

いままでできたことができなくなるというのは誰しもが悲しさや寂しさを覚えるものです。ですが、この仕事に携わり、一度体の状態がマイナスになってしまった方が、リハビリやマッサージによって元気に回復していく多くの姿をみることができました。

 

 

 

私がこの仕事を通して患者様から学んだことは、人はいくつになっても健康であることを望んでいて、かつ、実際に何歳になっても健康になることが可能であるということです。もちろん40歳の方が20歳のように、80歳の方が40歳のように体を動かす事はできませんが、その年齢における健康レベルというのを数パーセントでも高め、日常生活の質(QOL)を充実させることができることを学ぶことができたのは幸運なことだと感じています。ベッドから起き上がることができなかった方がベッドに腰かけて好きなテレビを見ることができるようになったり、階段の昇り降りができなかった方が介助無しでゆっくりでも昇り降りができるようになったりなど、普段私たちが何も意識せずに体を動かし、生活できていることがどれだけ幸せなことかということを患者様から教えていただきました。

 

また、誰か病気や体の不調で苦しんだ方が一人でも快復されると、それは同じような症状で苦しんでいる方の快復への希望になります。もちろん、体というのは目が二つあって、腕と脚が2本ずつあってとみんな似たような構造ですが、体の動き方、疲労が溜まっている部分、働いてる職業、その人のもっている癖、好みなどは全員異なります。誰一人として同じ体の状態の人はいませんし、同じ症状でも快復する手段はそれぞれ異なりますが、症状が快復する可能性があると患者様本人が感じることができた瞬間にその方はどんどん快復していきます。

 

 

 

とても不思議な事ですが、こちらが一生懸命医学の知識を伝えたり、説明しても患者様の状態はあまり良くなりません。むしろ煙たがれますが、患者様が治りたいと思った場合、私でも治るかもしれないと思った場合にメキメキと快復していきます。マッサージというとただやってもらう、テレビを見ながらマッサージを受ける状況だとあまり効果がなく、患者様がいまの状態が辛いのでどうしても治したい、なんとかしたいと思ってる方ほど回復が早いです。お腹が空いているほうが、ご飯も美味しく食べることができ、栄養の吸収も良好なことに似ているのかもしれませんね。

 

マッサージというのは一方的な行為ではなく、施術者と患者様双方の気持ちが一致して行なう共同作業なのだと、この世界に入り10年を経てから気付くことができました。

 

これからも健康の大切さを学んでいきたいと思います(^^♪

 

 

 

優治院 スタッフ

 

2019年10月16日